「景吾さーん。」
















・・・・・・何だそれは
























虫の声が、遠くで
























「・・・・・・何だそれは。」


「ニャン子です。」


「・・・・・・。」


「(うわ、絶対この人ひいてるよ!)」





部室で明日の練習メニューをと考えてたらいきなりが訳の分からないことを言ってきた。



お前マネージャーなんだからちゃんと仕事やれよ(兼俺様の彼女、な)





「反応しようよ。」


「何だそれ。」


「だーかーらー、ニャン子だって!猫!話戻ってるし!」





可愛いでしょ?といって猫のぬいぐるみを抱きしめている。




お前の方がずっと可愛いぜ?





「これね〜、友達から貰ったの。」


「ふーん・・・。」


「他にもいろいろあるよ!」





そう言って次々と出してくる。


・・・お前の友達はなんなんだよ。








俺だって知っている。がぬいぐるみが好きなこと。


いかにもらしい。というか似合いすぎている。




たくさんのぬいぐるみに囲まれてご満悦の


・・・・・・お前もぬいぐるみみてぇだな。





「ほら!これもあるよ。」


「っ!!!」


「びっくりした?」





目の前には茶色い物体。





「何だそれ。」


「これはねー、ズバリ!コオロギくんたちです!」


捨てろ。


「は!?可愛いでしょ!」





こいつの趣味はどうかしてるんじゃないか?



猫やら犬なら可愛いと言える。


だが今目の前にあるのは何だ?



実物よりも少し大きく、また幾分か可愛くなっているコオロギが3匹。





「虫じゃねぇかよ。」

「な・・・!甘く見ちゃいけないよ!これね、鳴くんだよ!」




そう言うとコオロギの背中を次々に押していく。


すると、メロディーが流れて、不思議と3匹の音色が綺麗なハーモニーを出している。





「ね!すごいでしょ!」


「いらねぇだろ、そんなの。」


「いるの!これから夜はよろしくね!コオロギくん!」


「・・・夜?」


「そう!前は一緒に寝るのくまだったんだけど今夜からはコオロギにすることにした。」


「俺にしたらどうだ?」


「あはは、景吾とだったら寝れないから。」





恥ずかしくて、と付け足し真っ赤になっていく顔。


そんな顔すんな。


無理やりでも一緒に寝るぞ。








あぁ、このまま押し倒してぇ。


何でそんなに愛しいんだよ。

それは狙ってんのか?





「世界中探してもコオロギと寝るヤツなんていないだろうな。」


「私がいるよ。」


「・・・・・仕事しろ。」


「うおーい、スルーですか。」





ブツブツ言いながらプリントを眺めてうなっている。


さっきから見てると笑ったり怒ったり、見ててあきない。










、やっぱりお前が好きだ。





「お前さぁ・・・。」


「ん?」


「うさぎだよな。」


「は!?」





ずっとを観察していて思った。


はうさぎだ。


うさぎはかまってやらないとすぐ死んでしまう。

も同じだな。



俺がかまってやらないとすぐすねるから(え、そんなこと1度もなかったけど)(うるせぇ、ごまかしてんじゃねぇよ)



特に泣いた時はうさぎそっくりだな。


目真っ赤になって、震える。



そんなことされた日には理性がもたない。





「私、そんなイメージかな?」


「あぁ、そっくり。」


「んー、じゃぁ景吾は・・・・・・。」


「俺か?俺は・・・ライオンだな。」





がうさぎなら俺はライオン。


カッコイイだろ?






「え、ちょ、私食べられるんですか?」


ああ。


「あわわ、景吾さん、私にそんな恨みでも・・・?」


「さあな。」





不安そうな顔も可愛い。


冗談だって言うとすぐになんだ〜、と顔がやわらぐ。













なぁ、














何でそんなに愛しいんだよ。





・・・・・・。」


「ん?・・・・て、ちょ、景吾、何してるの?」


「抱きしめてる。」


「た、確かに。」





耐えられなくなって思わず座っているを立たせて抱きしめた。



やわらかい。





「これは・・・食べられてる?」


「ああ。食べてる。」


「食べたら無くなっちゃうよ?」


「・・・・・。」





急にの顔が曇る。





「食べるってことは、壊れちゃうってことだよね・・・・・・?」





「・・・・・・景吾はさぁ、私を壊したいの?」





反則。



は俺よりも背が低いから俺と話すときは自然と上目ずかいになる。


その体制でそれを俺に聞くのか?





そりゃ、を壊したい。


感覚がなくなるまで、壊して、泣かして、俺しか見れないようにしたい。



俺しか感じられない体に。




でも、それをしたらが俺から離れていくから。





「壊すかよ。」


「ん?」


「ただでさえ、いつ離れて消えていくか分かんねぇのに自分で壊してたまるかよ。」





俺の力だと簡単にを壊せてしまう。


どうでもいい女なら別にどうってことないが、は違う。



些細なことで失ってしまいそうで、いつも不安なんだぜ?








それに、周りも危ないしな。


マネージャーということもあって、氷帝でもはだいぶ有名だ。


まぁ、に付きまとう邪魔なやつは俺が直々に制裁してやってたが。




問題はレギュラーだ。



先輩!といってやたらと一緒にいることが多いヤツとか、(跡部先輩、ひどいです)

膝枕〜、といって抱きつくヤツとか、(跡部が嫉妬してるー)

無駄にエロい関西弁でナンパしてくるヤツとか・・・・・・(ナンパやないで!告白や!)(もっとダメだ)







まさに、動物と一緒だな。





「俺が守ってやんねぇと。」


「・・・・・・?」


「お前、鈍いし、天然だし、」


「(け、けなされてる!?)」


「他のヤツにすぐ食われそうだから見てて危なっかしいんだよ。」


「ご、ごめん。」
























「俺が食ってやるから。」


「俺のモンだってしるしつけて他のやつに食わせないようにしてやる。」


は、俺だけだ・・・・・・。」





の肩に顔をうずめると頭を撫でられた。


愛しい。末期だ。





「ありがと。」


「・・・・・・、俺だけを見てろよ。」


「うん。景吾が先に食べて、他の人に食べさせないようにする・・・ってことだよね?」


「あぁ。」


「うんうん、納得。」





何で惚れたかなんて今はもう覚えていない。



ただ、日に日にへの気持ちは募っていくばかり。

いつか爆発してしまうんじゃねぇかって思えるくらいだ。
























なぁ、
























「・・・・・・しるし、つけてもいいか?」


「えっ・・・。」


「壊さねぇようにするから、しるし。」















「俺のだっていうしるし。」





いいよな?それぐらい。





「う・・・・・・うん。」

「痛くねぇから。」





首筋を軽く噛む。


吐息まじりのやらしい声に胸がなる。



本当は何箇所もつけたいところだがこれ以上やるとおそらく止まるらなくなってそれこそを本当に食べてしまいそうだったからとりあえずはやめておいた。





「何かされそうになったらこれ見せろよ。」


「(いや、恥ずかしくて見せられないでしょ)う、うん。」


・・・・・。」


「え、ちょ、っ、それは・・・・。」




恋人同士なんだからキスぐらいどうってことねぇだろ(むしろ普通だ)



と俺の唇が触れるまであと、数センチというところで、
























♪チャラララ〜♪










どこかで聞いたことのある音色。





振り返ると例の茶色い物体(ぬいぐるみだよ!)がこちらを見ている。




・・・・・・何か文句あんのかよ。





「・・・・・・あ!コオロギ!」


「あ?」


「これね、タイマー付なの。解除するの忘れてた。」


「・・・・・・。」


「景吾?」


「はぁ・・・・・、コオロギに負けたのかよ・・・・・・。」





いいタイミングで邪魔しやがって。
























虫の声が、遠くで
























今度の敵は、お前か?
























END

ただ、愛されたかっただけです