「日吉」
「何ですか?」
「かっこいいね」
「…ふざけてるんですか?」
「ふざけてはいないよ」

学校の帰り、手をつなぐこともなく並んで帰る。淡白なあたし達にはそれぐらいがちょうど良い。でも、足んないものもあって…。それは、私が不安すぎる事。日吉に告白したのも私。日吉は「はい」と一言言って付き合う事になったけど。デートだってしたし、キスだってした。でも、言葉が足りない。足りない足りない足りない…足りない。少女マンガであるような、あんなうざったい女にはなりたくないって思ってたけど…なってしまった。

「ねぇ、日吉」
「はい」
「好き」
「…」
「日吉は…?」
「…言わないと駄目なんスか?」

日吉は嫌そうな顔をした。照れてるとかじゃなくって、言葉で表さないと、俺の気持ちは届かないのか?って感じの。分かるよ。その気持ち。でも女って我儘なんだ。何でも、形にしたい。形に残しておきたい。依存症の産物なんだ。

「…ごめんね。日吉こういうの嫌いなんだよね」
「…いえ」
「こっちが悪いんだよね。ごめん。何だか我儘になっちゃった…」
「…」
「日吉」

答える事もなく、日吉はどこかの店に入って行く。そこは私が良く行くランジェリーの店。私がいつも入ろうって言って日吉も嫌そうな表情をしながら付き合ってくれて…。どうしたんだろう。日吉が自分から行くなんて…。

「日吉?」
「…これ」
「ん?」
「指に合いますか?」
「ん…。着けてみるね」

さしだされたのは、私が前から欲しいと言ってたリング。今、お金を貯めてて金額が追い付いたら買うつもりの…。渡されたリングを指に着けると…。

「ぴったりだよ」
「そうですか…。少し、待っててください」
「?」

そう言うと日吉は私が指から抜いたリングをレジまで持っていった。日吉?
日吉は綺麗にラッピングされた箱を持ってきて、私に差し出した。これって…。

「これ」
「え、これって今さっきの…リングだよね?」
「・・はい」
「これ…私にくれるの?これ、結構高いよ?」
「俺に女物のリングをつけさせるつもりですか?第一、指に入らないっすよ」

値段は結構値を張るし、こんな簡単に貰っていいものかと聞くと、日吉は苦笑いして、自分はつけれないと言った。その可愛さに心臓が跳ね上がる。

「…もらっていいの…?」
「そのために買って来たんスから、貰ってもらわないと俺が困ります」
「(日吉らしい)ありがとう、大事にするね」

貰った箱を大事にカバンの中に入れた。嬉しいなー、日吉からプレゼント貰うなんて。なんて、単純すぎか…アタシ。

「俺は、言葉にするのは苦手っすけど」
「…」
「ちゃんと先輩の事、想ってますから」
「…」
「だから、今度はペアの…リングを買うんで、その時は貰ってくれますか?」
「もちろん!」

日吉からの精一杯の愛情表現。もう言葉なんかいらないほど、十分もらってるよ、気持ち。
もう、心のもやもやは無くなっていた。







きだって言うのはだから
気持ちを素直に言うには少し抵抗があるからな。でも、いつかきっと言ってみせますよ。今度リングを渡すときに