キスって トクベツ だと思う







口付けの意味







私には とーってもカッコイイ(他の人に言ったら鼻で笑われるけど) 彼氏が居る。
彼の名は 真田弦一郎。
我が立海テニス部の副部長だ。

そんな彼と 付き合い始めたのは もう3ヶ月も前になる。
私たちの付き合いは 健全すぎるほど健全なもので
何度か手をつないで帰ったことがある 程度。

真田くんは見ての通り 堅物で 初心で
彼の周囲も含め 私の周囲は
私からのアプローチじゃないと進展は望めないだろうと 私を囃し立て 行動させようとするが
なんと 思い立ったらすぐ行動&行動あるのみ な性格な私も
結構 色恋事には 初心だということが判明した。



そんなこんなで ついに3ヶ月を迎えてしまった今日。
今日は珍しく部活も休みだということで 放課後少し寄り道をしながら帰ろうということになった。
(これって 放課後デートだよね?? 夢みたい)

しかし いざ帰ろうというとき 彼は先生に呼び出され 職員室へ向かってしまった。
私は黙って 教室で待つことしかできない。

私は 教室で彼を待つ間 少し これからのことについて考えることにした。

私だって 進展を望まないわけじゃないし 興味が無いこともない。
だからと言って 彼にも考えや想いがあるのかもしれないと思うと なかなか動くことができないのだ。
ヘタレ?? 黙ってろ。



慣れないことを考えた所為か 飽きたか 疲れたか
まあ 理由はともかくとして いつまで経っても戻ってこない彼に
ついに 私は眠くなってしまった。

眠いと思ったら寝る!!
そんな単純思考型の私は すぐに壁に凭れ掛かって 眠り始めた。
彼が戻ってくるまで あと何分寝られるだろうか??
結構な時間待っていたから 残り時間はそんなにないだろう。





ふと目が覚めると 教室は既にオレンジ色に染まっていた。

「えっ!?今何時―」
「5時45分だ」

驚いて 急いで時計を見ると同時に 隣から声が聞こえてきた。
もちろんその声は 大好きな彼のものだとすぐに分かったけど
どうして 隣に居るの?? アレ?? 起こしてくれなかったの??

「…真田くん??」
「どうした??」
「私 寝てた…よね??」
「そうだな。とても気持ち良さそうに寝ていたぞ」

否 そうじゃなくって!! 何で起こしてくれなかったのさ!!
学校が終わったのは4時過ぎくらいで 彼が呼ばれていたのも 長くて30分くらいだろう。
というと 何だ?? 残りの1時間以上は 彼は何をしていたのだ!?
もしかして寝顔見てた!? そんな…

「真田くんは 今まで何してたの?? いつから居たの??」
「うむ…1時間ほど前から居た。ずっとの寝顔を見ていたぞ」

やっぱりか!! っていうか 私 よだれとか垂らしてなかったよね!?

「横顔を??」
「否 初めは正面から見ていたのだが どうも気恥ずかしくなってな。
 こちらに移動してきたのだ」

顔を真っ赤に染め上げて言う真田に 私は少し恥ずかしくなって
口を閉ざしてしまおうと思ったが その前に
どうしても気になることが1つあったので そちらを解決しようと 口を開いた。

「さっきから 私の口ばかり見ているのはどうして??」
「―っ!? そんなことはない」
「ウソだよ。ずっと見てるじゃん。何??」

よだれが垂れてた…なんて言われたら ショックで立ち直れないかもしれない。
私は気を強く持とうと 気合を入れなおした。

「それは…」
「それは??」
「…口元が口付けを誘っているように見えたのだ」



…What!? 何ですと??



「その…口元が無防備に開かれていて…口付けをしたくてたまらなくなったのだ。
 無論 そんなことはしていない。己を厳しく律して―――」
「…どうして してくれなかったの??」

私の言葉に反応したのか 何なのか よくわからないけど
真田は一瞬驚いたような顔をして ビクリと震えた。
テニス部の―おそらく幸村にでも 何か言われたのかな??
通常とは異なった反応を返す真田に 私は ちょっとした 悪戯心が生まれた。
このまま 少し困らせたやるのも 楽しいかもしれない。
先のことなんて 全く考えてないけど 真田相手だったら何でもいいや と思って
私は 悪戯を実行することにした。

「真田は 私を何とも思ってないんだ!!
 だから恋人らしいこと何もしてくれないし キスだってしてくれないんだ」
「そんなわけないだろう!!」
「じゃあ 何でしてくれないの??」
「それは…」
「もういいよ!! 真田なんて」
「なんてとはどういう事だ!! 待て !!」

駆け出して 教室の後ろのドアから出て行こうとすると グッと強い力で後ろに引かれた。
当然 引いた相手は真田なんだけど 私は振り返らずに 離せ!!と叫んだ。

「離したらは逃げるだろう」
「当たり前じゃない!! 私のことを好きじゃない真田なんて」
「好きに決まっているだろう!! 馬鹿なことを言うな」
「…じゃあ 何でキスしてくれないのよ」

滅多に聞けないセリフ 好き に私は満足してしまったのだけど
このまま引き下がるのも癪なので このまま悪戯を続けることにした。

「キスは結婚する相手とするまで取っとくなんて考えてるわけ!?」
「そんなことはない。それに 相手はお前と決まっているから そんな理由でしないわけないだろう」
「じゃあ何よ、ホントはしたくないんでしょ」
「…言っても 笑わないか」

少し 強張ったような 神妙な面持ちになった真田に 私も閉口してしまって
沈黙を肯定として 話を進めた。
真田は 言い辛そうに目を泳がせた後 しっかりとした目で私を見つめた。
少し赤面しているのは 話題が話題な所為だと思う。



「一度してしまうと 後が止まらぬと思ったのだ。
 何度でも求めてしまう」


「そんなの 私は大歓迎なのに」










あとがき

『silent star』サマ 提出作品。
定番な上に 無駄に長い。おまけにセリフ多い…。うちにしちゃ珍しいパターンです。
真田は初心で堅物で少しむっつりなくらいが 丁度イイ。

読んで下さり ありがとうございました。

2008.5.25

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