さむい。炎天下の中、それも屋外のテニスコート。それでもどうしてか寒い。それなのにまわりの人はまったく寒く無さそうで、わたしだけがひとりさむいと呟き縮こまっていた。上着を取りに行こうとして、部室に入ると人影。仁王がいた。仁王はわたしと同じの半袖のユニホームを着ていた。わたしが部室に入ると仁王はこちらに顔を向けた。仁王は何もいわずにこちらを見ていた。わたしはこう寒いのにどうしてそう平然としていられるのか、不思議で仕方なかった(いつも文句ばかりいうのに)。 「そんなに寒いんじゃったら俺があたためてやろうかのう・・・?」 何も言わなかった仁王が笑ったと思えば、いきなり間近に仁王の顔が映って視界は暗転した。少し重みのあるあたたかさが体を包む。はっとして目を開けると白いシーツが目に入った。・・・・・・・なんだ、夢か。わけわかんないけど、なんかいい感じの夢だったなー、そんなことを思って寝返りをうって寝ようとした、が無理だった。腰の辺りががっちり固定されている。何やらあたたかいも、の、で!!!?? 「に、におー!!!??」 「あ、おはよーさん」 わたしの腰に腕を巻き付け、ベットに潜り込んでいる。あたたかいものの正体は仁王だった。(なんですか、この状況は・・・・・連れ込んだ覚えないし・・・) 「ゆめ?ああ、まだゆめみてるのか、そうだよ、いるわけ・・・」 「夢じゃなくて本物の雅治くんですよー」 「ぐえっ!」 どうやら本当に本物の仁王らしい。仁王はわたしの腰をさらに締め付けた。(いたいっ!いたいからっ!!) 「ほれ、夢じゃなかろう?」 「わかった!わかったからちょっと離れて!」 やっと仁王から解放された。仁王はそのままわたしのベットを占領した。(わたしは床であなたはベットに座るんですか) 「・・・どうやってきたの?なんでいるの?なにしてんの?」 「質問はひとつずつにしてくれんかのー」 「(いらいらするやつだな・・!)・・・・・・いったいわたしに何をしてたんですか?」 「さむいさむい言っとったから、あたためてあげようと思ったんじゃ」 「雅治くん、やさCー」氷帝の芥川くんの真似をして仁王が言った。(今別にイリュージョン必要ないし!)それより、なんで寒かったん・・だ・・・・・おい。 「誰がやさしいって?」 「俺じゃけど?」 「原因はおまえだろ」 「結果よければ全てよし、じゃ」 「よくないから」 さむいのも当たり前。窓が全開になっていたのだ。カーテンが窓から外になびいていた。仁王の今の格好はさっきまで部屋にいましたと言わんばかりだ。仁王は窓から来たにちがいない。 「もしかしなくても、窓からご登場で?」 「プリ」 「ごまかすな!」 「まあまあ、そんなに怒りなさんな」 「・・・・・まさか、と思うけど・・・・窓から飛び移ってきた・・・?」 「どう?俺って天才的?」 「ブン太にならなくていいから」 仁王の家はわたしの家のお隣さん。確かに仁王とわたしの部屋の窓は近い。(ちかいけど飛び移ろうって距離じゃ・・・・) 「・・・・まじ?」 「マジ」 「あんた、ばか?」 「よりはかしこいと思うが?」 クツクツと仁王の笑い声が響く。わたしのベットに不貞不貞しく腰を掛けている仁王は確かにわたしより成績がよろしい。(だけど、そういう意味で言ってるんじゃないからね!!) 「・・・で、その賢い詐欺師様が危険を冒してまで不法侵入した理由はなに?」 「夢みたから」 「・・・・・・・は?」 仁王がわけわかんないことをいうから思わず間抜けな声を出してしまった。 「仁王、わたしの話聞いてた・・・?」 「聞いてたぜよ」 「でも、話かみ合ってなくない?」 「はわかっとらんのう」 仁王はあからさまに不服そうな顔をしてベットに寝ころんだ(あ、こら!わたしのベットに勝手に寝るんじゃない!)。ベットから落としてやろうと試みたが無理だった。 「のう、」 「なにー・・・」 「今日の古典受けたか?」 「・・・・ん?受けてましたけど、それが・・・?」 「なら、いわない」 「けち」 仁王のいっている言葉の意味がさらにわからなくて、たったひとつの手がかり、古典のノートをしかたなく鞄からだした。 「つまり、仁王のその不可解な行動は全部今日の古典の授業が原因?」 「おしいっ!・・・半分正解ってとこじゃなー」 「はんぶん?」 「そ、あと半分はのせい」 (わたしは何もしてません)もうはっきりいって仁王がどうしてここにいるかとかどうでもよくなってしまってきていたのだが、(眠れなくても、明日の授業寝ればいいし)手持ち無沙汰に古典のノートをめくった。今日はどこやったんだっけ・・・・。 「俺、に愛されてとるなー」 「・・・・・なに、いきなり、気持ちわるい」 「うわ、ひどいのう・・・ただ思ったこと口にしただけじゃよ?」 「愛してるとか言った覚えはありませんが」 「だって、いきなり不法侵入したのに追い出さんし」 「・・・・・・不法侵入自覚してたんだ」 「だって、ベット使っても気にしとらんし」 「(さっきの言葉はスルーですかい)・・・・・さっき落とそうとした」 「だって、今日俺の夢に出てきたし」 「それは、仁王が勝手にわたしを出演させただけでしょ」 「そうじゃのうて・・・・”夢に出た相手が自分のことを想っとる”から」 「はい?」 「古典の教師が言ってたぜよ?」 だから、古典ですか。そういえば、昔の人の考え方だとか言っていたような気がする。 「・・・・・・それが理由?」 「が俺に逢いたがってると思ってのう」 「阿呆か」 はた、とさっき見ていた夢のことを思い出した。 「じゃあ、仁王もわたしのこと想ってたでしょ?」 「ほう・・・・・の夢に俺が出演?」 「うん、さっき起きる前」 「そんなに俺のこと考えてくれてるんかー嬉しいぜよ」 「・・・・さっきと言ってることが違うし」 「嘘じゃ、俺もおまえのこと想っとるよ」そう言って仁王は優しく笑って私の頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜた。ぐしゃぐしゃにされて嫌そうな顔をしていたら、きれいに手で梳かしてなおしてくれた。(撫でてくれる手が気持ちよくてすこしばかりときめいてしまった)けっきょく、仁王がわたしに逢いたかったんじゃないのか。(でも、わたしが仁王に逢いたかった・・・・かもしれない) 「・・・・もー、いみわかんない」 「なにが?」 「想ってるとか、想われてるとか」 「まー、どっちにしても、想いあっとる俺らには関係ない話じゃがな」 「・・・・・ほんと、恥ずかしいな、仁王は」 「でも、そうじゃろ?」 わたしは仁王に呆れた顔をして(それでもわたしの口元がゆるむのはおさえられなくて)、笑った。わたしは、そこでひとつあくびをかみ殺す。まだ、朝には早いから寝ようと言ってベットに入るとやっぱり仁王も入ってきてでも追い出す気はなかった。いがいそうな顔をする仁王を抱きしめるとやっぱり抱きしめ返してきたけれどわたしとおそろいの赤に頬がほんのり染まった。わたしはそれにすっかり満足してしまって仁王に許しを請うことなく夢の世界へおちていった。 |
silent star様に提出! 素敵企画に参加させていただきありがとうございました* (080904 皇ジュン) |