空気が澄んだ真冬の空には隠れていた星がひょっこり顔を覗かせる。
普段肉眼では見えない星までも自己主張するように夜空に輝いていた。
そんな小さな星を眺めるのは楽しい。



  ♪ ♪ ♪ ♪ ♪



携帯がメール着信を告げた。
こんな時間に誰だろう?と思いながらは机の上に置いてある携帯を開く。


白石蔵ノ介


星に例えるなら白石は北極星なのだろう。
テニスの聖書(バイブル)と呼ばれる彼の存在はの目印だ。



「――もしもし・・・」

、今なにしてたん?』

「星、見てた」

『偶然やな〜俺もなんや』

「そうなん?」

『せや、上見るとな可愛らしい女の子が半纏着て星見てんねん』

「ふ〜ん半纏着て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?ちょちょ、ちょっと!」



今まで空ばかり見ていて気がつかなかったが、の家の前に人影が見えた。

(蔵ノ介!)

月明かりが白石を照らす。
は慌てて階段を駆け下り玄関を飛び出した。



「何で?何時から?」
「ん――何時からやろな」


白石の様子から長い時間居たのだろうと思った。
手袋をしていない手は心なしか赤い。
その頬も・・・

「ほっぺ冷たい」
の手は温かいな」
「ごめん、気付かなくて・・・ごめん」
「ほな、が温めてくれるん?」
「うん」

躊躇することなく白石を抱き締めた。
冷え切って冷たいハズなのに彼は温かい。





「蔵ノ介のアホ!・・・こんなに冷えて・・・・・・でも温かい」
はもっと温かいな」
「何してたん?」
「空見とったらな月が出とって、に会いたなった」
「蔵ノ介」
「なんでやろな、自分でも判らへんけど・・・・・・部活で遅うなって夜空見上げた時に月があると明るいやろ?を思い出すんや」
「あたし?」
はいつも俺を照らしてくれるからやろか」
「それ言うたら蔵ノ介は北極星だよ。いっつもあたしの目標だもん」
「俺らは互いに必要不可欠っちゅうヤツやな」





 見上げた夜空には




「せやから闇夜はキライなんや、空にがおらへんから」
「えっと・・・ありがとう?」
「っちゅうワケで本物ので補充することにした。いや、月が出とっても出とらんでも補充するけどな」
「はい??・・・・・・それどうい・・・」


の言葉は白石の唇に呑み込まれた。