まるで世界にふたりきりのような





「ねえ、もしも亮が世界に1人だけの男になったとするでしょ?」

「それでも亮は、私を見つけてくれるのかな。私を好きになって、くれるのかな」



誰もいない教室にこっそり忍び込んだ朝。(たぶん今学校には誰もいないはずだ)自分たちの教室に入って他愛のない話をしていた。でも突然が黙り込んだ。そしてその沈黙を破った言葉がそれだった。頬杖ついて窓からぼーっと空を見上げて、ちっせえ声で言ったその台詞に俺は、はぁ?と声をあげた。



「言っとくけど、真剣な話なんだからね!」
「…意味わかんねえんだけど」
「や、だから!今、全世界にいる男の人たちが亮以外みーんな、いなくなったとします」
「……ああ」
「でも女の人はみんな、いるの」
「(何でだよ、なんて聞けねえ…)ああ」
「海外の女優とか、人気アイドルとか、綺麗な人がいっぱいいて、」



そこまで言っては言葉を止めた。どうしたんだよ、と問いかけてもは少し悲しそうな顔で、俯く。…勝手に落ちこんでんじゃねーよ。ったく、仕方ねえ奴だな。



「!!」



そっと手を繋いだだけなのに、は大きく目を見開いて、俺を凝視した。見つめられて恥ずかしくなってきて、目を逸らすとはクスッと笑う。



「…それでも、亮はその、何億人かいる女の人の中から、私を見つけて、くれるのかなって」

「私を、好きになってくれるのかなって、ちょっと考えてたの」



少し赤くなった頬を人差し指で掻いてへへっと笑ったに、俺は溜め息をひとつ吐いた。



「…亮?」



不安げな目で俺を見つめたに、俺はニッと笑ってバーカ、と言った。



「バカって…、ひどい!」
「お前なぁ、んなしょーもないこと考えてんじゃねえよ」
「しょーもないことじゃないよ!」




「俺は、お前以外の女なんかどーでもいいんだからよ」



そう言えば、はびっくりしたのか動きを止めた。でもすぐにハッと我に返って俺をじーっと見つめた。そして「本物?」なんて聞いてくるからぽこっと一発頭を叩いてやる。



「痛いっ!」
「偽者なわけねーだろーが」
「……だって亮が、あんな台詞を……!」



少しニヤケた顔で言うに、言う瞬間は恥ずかしくなかったのに、一気に恥ずかしさがこみ上げてきて、俺は繋いでいた手を勢いよくバッと離した。



「その照れ方は、間違いなく本物の亮だ!疑ってごめん!」
「………なんだそれは!」



真っ赤になって怒鳴りつけるとはあははっと楽しそうに笑って、ガタッと音を立てて椅子から立ち上がった。どうした?と声をかける間もなく、は俺に抱きついてきた。



「どうしたんだよ」

「亮のこと、世界でいちばん、大好きだからね」

「……ああ、」






まるで世界に


ふたりきりのような


(俺も……、世界、で、いちばん好きだぜ)(……ほんとにほんとに、亮だよね?)(お前…っ、ふざけんな!)






(ギャグちっくな甘)(silent star様へ提出*)