「やっぱしここにいた、ジロー寝てんなよ!」

マネージャーでもないのに毎度毎度、跡部に蹴られて屋上やら裏庭やらまでジローを探しにくるこっちの身にもなれっての!仰向けにすーすーと寝ているジローの額をぺしぺしと叩きながらそう呟く。
けれどジローは一向に起きる気配はない、それに背中に照りつける太陽が熱い、暑い、のなんの。
ぐるっと振り向いて太陽を見ようとすれば眩しさに目がくらんだ、のに周りに広がる広大な青空は、むかつくほどに清々しかった。

ジローを背に後ろに手をついて座りこむと、下のほうから聞こえる野球部の大きな挨拶の声、それからテニス部の声援が子守歌のように小さく聞こえる。後で跡部がうるさいだなんてわかりきったことだけれど、それでも眠気には抗えなかった。

 

 

 

 

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「うあー、…やっべ、もう部活はじまってる」

開ききらない目をしばたかせてあくびをひとつすると、地面についていた手に何かが触れた。

 

「あ、起きた」
「ん、やっと起きたのジロー」
「俺のがおめえより早く起きたもんね」
「てか何時!」

あわてて制服をまさぐってケータイを探し出してるのを見てるとよく聞きなれた着うたが流れた。ディスプレイを覗き込むとそこには『あほ部』と表示されていて、「俺もそうする!」と言えばケータイを耳に当てながら笑った。

 

「もしもしあほ、あごめん間違った跡部?」
『アーン、てめえど頭かち割ってやろーか、んなことはいーんだよ』
「なにひとりで言ってんの」
『てめえジロー探しに出してから何時間たってんだよ』
「えー、6時間」
『死ね』
「死ぬかあほ、生きるわ」
『はやくジロー連れて来い!宍戸と試合だっつっとけ』
「え、まじまじ!ちょーマッハで歩いてっから!」
『走れ』
「えー跡部鬼ー」

ツーツーツーツーツー、

「切られた」
「まじで、あいつどんだけ唯我独尊ー!」
「宍戸と試合だってー」
「宍戸と試合だってー」
「…やばくね!」
「走んのめんどくさE!」

 

 

青空はまだまだ青くて、太陽はまだまだ暑くて、さっきと何も変わってないというのなら、さあ、

 

朝を迎えに

(私絶対朝のほうが足速いんだって!) (それ負け惜しみだC) (ジロー遅えよ!) (お前ら!) ((ぎゃー!出た跡部!))

 

 

 

 

080815/silent star様へ、(photo by Sky Ruins)