彼だけには絶対に嫌われたくなかった。
囁かれた言葉
「じゃあ、侑士君またね?」
「ん…さんも気ぃ付けてな?」
恋人達が別れるにはまだちょっと早い時間。
送っていくと言う申し出を断るといつも彼は悲しそうな顔をする。
あたしだって本当はもっと一緒にいたいし、そんな顔をさせたい訳じゃない。
だけど、一緒にいればいるほど本当の自分をみせてしまいそうで怖い。
彼にだけは絶対に知られたくない。絶対に嫌われたくない。だからあたしはいつも年上の女を演じている。
こんな情けない本当のあたしを見せても彼はあたしを好きでいてくれるのかな?
精一杯強がってみるけれど、一人になるといつも寂しくて仕方ない。
休みの日も侑士君は部活だったりで会えない事が多くて。疲れてるんじゃないかなんて思って連絡する事さえできなくて。
たまに彼ががあたしを必要としてくれてるのかどうかさえもわからなくなる。
だけどそんなあたしを支えてるのはきっと年上としてのプライドだ。
そんな事を考えながら歩いてたら涙腺が緩んできた。
こんな姿、彼には絶対見せられないな。
「さん!」
名前を呼ばれて振り返ると、さっき別れたばかりの彼が息を切らせて走って来るのが見える。
「侑士君…何で?どうしたの?」
「どうしたも何も…あんなに寂しそうな顔されたらほっとかれへん。」
そう言うと同時に抱き締められた。
彼には絶対に涙なんて見せられないと必死に涙をこらえる。
これ以上優しい言葉を言われたら限界を迎えてしまいそうだけど。
「何でそんなになるまで我慢するん?」
「だって…侑士君は年上が好きだから…甘えちゃいけない。我儘言ったら嫌われるって思って…」
震える声で一気に話すと少し呆れた顔で笑われる。
「さん、結構アホやな」
「ひど…!」
「俺がさんのこと嫌いになんてなれるわけないやろ」
「でも…そんな甘えるの年上らしくないでしょ?」
「あんな?俺は年上が好きなんやなくて、さんが好きなんやけど?そこんとこ誤解せんといてな?」
どうして侑士君はいつでもあたしの1番欲しい言葉をくれるのかな?
もう本当のあたしを隠さなくてもいいの?
「これからは言いたい事、ちゃんと言うんやで?」
「…はい」
「それと、これからはさんの事、って呼んでええ?」
「…うん」
情けない年上のあたしと、優しすぎる年下の彼。
こんなあたしを包んでくれる優しい腕の中で何度も囁かれる言葉に胸がいっぱいになった。
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遅くなりすぎて本当に申し訳ありません…!(土下座)
しかもとってもびみょーな感じで更に申し訳ありません…。
最後まで読んで下さった方と素敵な企画に参加させて下さった未菜さんに心を込めて!ありがとうございました。
2009.2.28