「俺、お前のこと、好き。」

 

ずっと幼馴染だったブン太にそう言われたのは半年前。

私は「ブン太は私にとって幼馴染。」

何度もそう答えているのに、

 

あの告白の日から、毎日のように、

「好き」

の嵐。

 

 

だから、ブン太はただの幼馴染なんだってば。

 

 

 

 

 

 

 

、今日も大っ好き!」

 

朝、学校で会った途端に、私を押し潰さんばかりの勢いで飛びついてきた。

 

「ぶ、ブン太、苦しいから・・・苦しいから!!」

 

それでも、ブン太は離してはくれない。むしろ、力は強くなった。

 

「俺のこと、好きって言ってくれたら、離してやってもいいぜぃ??」

 

「好きだよ。

・・・・友達としてなら。」

 

「ヤダ。」

 

それでも、何だかんだで今朝はこれくらいで勘弁してくれた。

私のことを想ってくれてるのは嬉しいけど、どんなに好きって言われても、

幼馴染っていう関係だけは壊せない。壊したくないんだ。

 

 

やがて、予鈴が鳴り、私もブン太も、席についた。

 

一時間目は数学。

机の中から教科書類を取り出そうとすると、机の中からは、教科書と共に

身に覚えのない紙切れが出てきた。

 

”今日の放課後、体育館裏で待ってます。

                    吉田”

ちょおぉお!吉田誰だよ!!

私知らないんですけど・・・・

 

今日は一日中、この手紙のことを考えていた。

授業にも身が入らない。

 

体育館裏なんて、何かあっても誰も助けてくれないし、

そもそもこの展開って何か告白・・・っぽい雰囲気じゃん?

 

ぼーっとそんなことを考えながら過ごしていれば、あっという間に時間は過ぎ、

今日一日の過程が終了した事を示すチャイムが鳴り響いた。

 

よし・・・、行こう。行かないと結構酷い奴みたいになるし。行くっきゃない!

行ってみないことには何も・・!

 

向かった体育館裏には、背の高い、黒い髪の少年の後姿が見えた。

「あの・・・吉田、君・・・ですか?」

 

肩を叩くと、ビクンと体を震わせて驚いて、ゆっくり振り返った。

 

「あ、うん。き、さん・・・・

あの、さ・・・。」

 

吉田君は、照れくさそうに頭を掻きながら答えた。

 

かと思えば突然、力強く肩をつかまれた。

 

そして、すーはー、と大きく深呼吸をした。

 

「俺、さんのこと、好きなんだけど!だから、その・・付き合って、ほしいんだけど・・・」

 

嫌に真剣な目で見つめられた。でも、それが怖かった。

そもそも私は吉田君のこと知らないし、どうしていいか分からなかった。

 

”付き合えない”

 

何て言えばいいんだろう・・・。

 

「えっと・・あの・・・私、吉田君と会うの、初めてだし・・・何ていうか・・・ごめん、ね。」

 

吉田君は一瞬悲しそうな目をしたが、やがて私の肩を掴んでいた手を離した。

さんは好きな人、いるんですか?もしいないなら・・・俺と付き合ってほしい。

嫌になったら、いつでもフっていいから!」

 

好きな人・・・いないよ・・・。

でも何でかな、モヤモヤするのは。

 

好きな人なんかいないはずなのに、どうしても吉田君に、いない、って言えない。

 

私、どうすれば・・・・。

 

「好きな人なんかいねぇんだろぃ?」

 

どこからともなく聞こえた声。

聞き慣れた声。その声の持ち主はブン太だとすぐに分かった。

 

見れば、走ってきたのか、息を切らしているブン太がそこにいた。

 

・・・好きな人いねぇからそいつと付き合うとか言ったらキレる!

もしそんなんで付き合えんなら、俺のほうが先着だろぃ。」

 

ブン太・・・私こんなにブン太に想われてるんだもんね・・・

こんなことで迷ってるなんて、ブン太に失礼だ。

 

 

ありがとう。ブン太のおかげで勇気出たよ。

 

「ごめん。吉田君。私、やっぱり私、あなたとは付き合えない。

私には、ブン太がいるの。」

 

やっぱり・・・ブン太といるのが一番落ち着くし、とっても楽しいんだ。

 

「そ、そっか・・・ごめんね・・・じゃあ。」

そう言って苦笑いすると、吉田君はこの場を去って行った。

 

吉田君の姿が見えなくなった途端、座り込んだ私に、ブン太は笑顔で飛びついてきた。

ブン太脳では私の首に回る。

「なぁなぁ、、『私には、ブン太がいる』ってどういう意味??」

 

彼が目を輝かせて言った。

 

そんなの・・・聞かなくても分かってよ・・・

「私は、やっぱりブン太のことが好きだった・・・。」

 

「やったぜぃ!!」

大きくガッツポーズをした、とっても分かりやすい奴だけど、

そんなところも愛しく感じていることに、

今更気付いた。

 

「俺、本気でのこと好きだから!マジ大好きだから!!

あぁっと・・・その・・・なんつか・・・」

慌てふためいているブン太もまた可愛い。どうしちゃったんだろう、私。

ブン太ってこんなにカッコよかったっけ??

 

「あぁーーっ!上手い言葉が見つかんねぇ!

とにかく、s・・・・」

もう一度好きだと言おうとしたようだったけれど、

何かひらめいたように言葉を止めて、私の耳元に口を近づけた。

 

「愛してるよ、。」

いつものブン太とはギャップがありすぎるくらい小さな声で囁いた。

耳からの刺激が一気に全身を駆け巡ったような気がした。

 

更に、ブン太はまたいつものようにニカッと笑った。

私の心臓の音が高まっていく。

 

「私だって・・・大好きだよ。」

そう言って、初めて自分から抱きしめた。

 

 

こんなに好きで好きでたまらないのに、こんな大きな想いに今更気付くなんて、もったいな過ぎた。

 

ごめんね、ブン太。

 

そして・・・

愛してるよ。

 

今更かもしれないけれど

 

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跡部未菜様。

素敵な企画に参加させていただきありがとうございました。