明日が来る前に
3月14日。
「はぁ・・・。」溜め息を付く。
「〜っ!」仲良しの友達2人から声が掛かった。
「残念だねー♪ 折角のホワイトデーなのに。」
「ホントホント! こういう事もあるんだね♪」
「・・・嫌味に聞こえる〜。」がボソリと言った。
「あはは、そんなつもりは無いよ〜♪ でもさ、跡部様だよ? 彼女に納まったには悪いけどさ、やっぱ、ちょっと羨ましいじゃん。あんな人が彼氏何てさ。」
「同感!! マジで羨ましいよ。あ〜、私もあんな彼氏が欲しい〜♪」
盛り上がる友達。
「今頃何してるんだろうね?」
「まぁ、確かに彼氏として最高だけどさ、テニス以外に跡部財閥としての役割って言うか、催しとかに参加しなきゃいけないじゃない?」
「そうそう! 忙しくて寂しい時もあるよねー?」
「例えば、『今日』!」
がピクッと反応した。
学校の中で人気No1の跡部景吾。はその彼女。
当の跡部本人は、親戚の葬儀に参加しに、アメリカへと旅立っていた。
もう5日ほど経っているが、連絡が付かなかった。
今日はホワイトデーという事で、女子は『想い』のお返しを期待してドキドキしている。
もその一人である。
が、そんなお返しよりも、会えない、声を聞けない、顔が見れない、笑顔が見れない・・・そんな寂しい思いの方が強かった。
の頬を涙が伝った。
「あ、やだ、〜、泣かないでよ〜! ゴメン、ね? ね?」
「ゴメンゴメン、ちょっと調子に乗り過ぎた。だから、泣かないでよ〜!」
謝る友達。
「ねぇ、。本当に連絡が付かないの?」
「うん。」涙を拭いながらが言った。
「、学校の帰りに、パーラーに寄って行かない?」
「え?」
「泣かせたお詫びと、今日のホワイトデーに良い事なしの私達3人で、ケーキバイキングでもしない?」
「うん。」が笑みを浮かべた。
パーラー。
「・・・すっご食欲・・・。」
「やけ食い?」
「何とでも言って。」のテーブルに、食べたケーキのお皿が次々に重ねられていった。
10個。
が食したケーキの数。
「あー、食べた食べた!」お腹をポンポンと叩く。
「ありがとね・・・。気にしてくれて。」が恥ずかし気に友達に言った。
「友達じゃない♪」
「うん。」そう頷くの頬を、又しても涙が伝った。
「どうしたの!? 今度は何〜??」
「あは、嬉し涙。良い友達持ってて嬉しい。」笑顔でが言った。
「うんうん。お返しは、合コン設定で宜しくね♪ ♪」
「は?」がキョトンとした。
「だけ彼氏持ちなんてさ、ずるい! 幸せのおすと分け♪」
「え〜〜!?」
にとって楽しい時間が過ぎていった。
宅。
の部屋。
が携帯とにらめっこをしていた。
「・・・景吾さん・・・忙しいのかな・・・。」は溜め息を付き、携帯を机の上に置いた。
午後10時37分。
はパシャマに着替え、ベッドに入った。
午後10時39分。
明かりを消した。
午後10時49分。
キィィィ・・・ン!
午後10時53分。
キィィィーーーン!!
「・・・何? この音。うるさいなー。」はそう言うと、布団の中に丸まった。
午後10時55分。
「♪〜♪〜〜♪」の携帯が鳴った。
がガバッと起きた。
「この着信・・・!!」携帯を慌てて開いた。
画面に『跡部景吾』と名前が出ていた。
「も、もしもし・・・。」が携帯に出た。
『俺だ。』
「景吾さん!?」はその場に座り込み、涙を流した。
『悪かったな、連絡もしねぇで。』
「う・・・ひっく・・・ひっく・・・。」の胸は跡部で埋め尽くされた。
『泣いてるのか? ・・・、お前の家から数件目の、10階の立てのビルの屋上に来てくれ。』
「え?」突然の跡部の言葉に驚く。
『今説明してる時間がねぇんだ。そのままの格好で、来てくれ。』
「は、はい。」訳が分からないであったが、電話の向こう側に跡部が居る・・・。
は携帯をポケットに入れ、急いでそのビルへと向かった。
ビルの屋上。
キィィィィーーーン!!!
「!!!!!!!!」は驚いた。
上空に、飛行機がグルグルと飛んでいたからだ。
「この音・・・。あの飛行機の音だったんだ・・・。」
午後11時12分。
上空から人影が見えた。
その人影が勢いよく落下している・・・と思った瞬間には、も空を飛んでいた。
正確には、ビルの屋上から跡部に抱き抱えられ、一緒に落下し、同時に落下飛行している飛行機に飛び込んだ。
余りの出来事に、は固まっていた。
だが・・・感じる・・・跡部の暖かさを・・・。
「け、景吾さん〜!!」は部に抱き付いた。
「怖かったか?」
頭をぶんぶんと左右に振る。
「・・・。」跡部がキスをした。
「今帰って来たぜ。」をぎゅっと抱き締める跡部。
「お帰りなさい・・・。」涙を流しながらも、笑顔で応える。
「何とか明日じゃなくて、今日中に間に合ったぜ。」
「え?」
「今日はホワイトデーだろ? これが俺の気持ちだ。」跡部は、の左手を取り、中指に指輪をはめた。
「綺麗・・・。」
「この指輪は、俺がバイトして稼いだ金で買った物だ。」
「え? バイト?」
「ああ。アメリカでな。連絡したかったんだが、なかなかタイミングが合わなくて、結局こんな形になっちまったぜ。」
は胸が熱くなった。
こんなに想ってくれていた事を実感して・・・。
「左手の薬指は・・・ちゃんと空けとけよ?」跡部がを抱き締める。
は頷き、跡部にしがみ付いた。
「この飛行機、どうしたんですか?」
「自家用機だ。」
「そんな事よりも、俺に言わせろ。」
「何をですか?」
「明日になる前に、、お前の事をどれだけ好きか、って事をだ。」
「!!」顔を真っ赤にする。
こうしてホワイトデーは終わっていった。