守るべきもの (一喜一憂愛)
「フフ・・・本当に驚いたよ。まさかあの真田とあのが結婚するなんてね」
幸村は2人を見比べながら言った。
「確かにこれはデータ範囲外な事件だな」
柳も2人の顔を見た。2人は苦笑しながら幸村と柳の顔を見た。
確かに中学時代から2人を見ていた幸村、柳からすれば意外な結婚なのだろう。
中学1年から高校2年ぐらいまで2人はお互いをこれでもか、というほど毛嫌いしていた。
大方その辺りから考えて意外なのだろう。
「・・・・・・人生って分からないものだよね」
「・・・・・・そうだな」
の呟きに真田が答えた。幸村はそんな2人を見てフフッと笑った。
「2人とも、もうちょっと待ってね。もうすぐで紅茶入るから」
は幸村と柳に穏やかに言った。
「そんなに気を遣わなくてもいいぞ」
「いいのいいの。・・・こういうときでないとあの街で評判のシュークリームも買えない」
あはは、と笑いながら紅茶とシュークリームをのせた皿を2人の前に置いた。
「はい、弦一郎も食べるでしょ?」
「あぁ・・・ありがとう。・・・はいらないのか?」
自分の席に紅茶だけを置いて腰掛ける#NAME1##に、真田は微かに眉を寄せた。
幸村と柳もその言葉に顔を上げる。
「え?まあ・・・。あんまり食べたいと思わなくて。体調よくないの」
そう言っては苦笑する。
「風邪でもひいたのか?」
幸村が少し心配そうに言った。
「そうかもね・・・。最近何食べてももどしちゃうみたいだし、熱っぽい気もするし・・・1回病院行っとかないとね」
「・・・・・・・・・もしかして?」
「何?」
「な、何だ・・・?」
柳はゆっくりと真田の顔を交互に見ると静かに口を開いた。
「妊娠したのか?」
4人の間に沈黙が走った。
5分くらい経っただろうか。が沈黙を破った。
「・・・えっと。誰が?」
「俺はしかいないと思うけど?」
幸村は小さく笑いながら言った。
「ま、詳しくは病院に行かなければ分からないからな。早めに行った方がいい。
・・・・おい、弦一郎」
「!?あ、あぁ・・・何だ」
「を病院に連れて行けよ。何かあってからでは遅い」
―――案の定。
その日の夕方病院へ行くと、医師から“妊娠”と診断を受けた。
「3ヵ月半・・・か。柳の言うとおりだったね・・・」
は医師が記念に、と撮ってくれたお腹の中の子どもの写真を見ながら呟いた。
「弦一郎もお父さんか・・・」
「は母親だろう?・・・・・・異変に気付いてやれなくてすまなかった」
真田は肩をすくめ申し訳なさそうに言った。
「・・・何で謝るのよ。私自身分かってなかったのに・・・というか、子どもが出来てるだなんて夢にも思わなかった。
・・・・・・嬉しい」
「嬉しい・・・?」
「そ、嬉しいの。好きな人と自分の子どもだからね、嬉しくないわけない」
はふわりと笑った。
真田はそっと優しくを抱きしめた。
「弦一郎?どう「ありがとう」・・・え?」
「ありがとうと言ったのだ。俺との子だからな、俺だって嬉しい」
耳元で静かに放たれたその言葉は、にとって心地の良いものだった。
それからというもの、2人の生活は温和で充実していた。
*
*
*
「可愛いですね」
「ひょー髪の毛がふわふわだぜぃ!?」
あれから何ヶ月かが過ぎ、真田家には女の子が誕生した。
今日はその子を見るために中学時代のテニス部の仲間が真田家に集まってきた。
「、真田。・・・おめでとう」
「本当にご無事に出産されて何よりです」
幸村と柳生が言った。
「ありがとう」
はにっこり笑って言った。
「・・・あんまり副部長に似てないっスね」
「確かにそうじゃのぅ・・・」
切原と仁王がベビーベッドの中で手足をパタパタさせている赤子を見ながら首をかしげた。
「・・・お前ら・・・それは嫌味か?」
「げっ!」
うっすらと青筋を浮かべている真田を見て切原は慌てて弁解して避難をする。
「そういえば・・・名前はもう決めたのか?」
柳がふと思い出したかのように尋ねた。
「あ、そうそう・・・。“”って名前にしたの!弦一郎が考えてくれたんだよ」
「うむ・・・」
「真田か・・・弦一郎にしてはなかなかだな」
「ちゃんじゃのう」
自分のことと分かっているのか、分かっていないのか・・・は嬉しそうにする。
「弦一郎みたいに強くて心優しい子になってね」
はそっと囁くように願いを込めた。
どうかこれから先も幸せが溢れますように―――。
あとがき
お題の100分の1になれて良かったです。
ありがとうございました。