「よぉっし!完成、オムライス」
































の前には・・


オムライスらしからず真っ黒な物体


そしてキッチンからは異様な臭いが漂っている




「ちょっとぉ!?アンタまた料理しようとしたわね!?」


「あ、お姉ちゃん」




そう、のつくる料理は壊滅的なのだ


だから家では 『をキッチンに立たせてはいけない』 という決まりがある




「しかも・・・・・何これ、完成形?真っ黒じゃない、どうやったらこうなるの」


「え?だってこのレシピの本に書いてあったとおりちゃんとやったよ?」


「・・・アンタの料理の腕はある意味神の手ね・・」




呆れる姉をよそに、はその物体の上にケチャップをかけだした




「ちょっ・・何してるの」


「今日は千里が来るの、だからオムライス作って食べてもらおうと思って」


「はぁ!?アンタ千歳君にそんな化石みたいな物体食べさせるつもりだったの!?」


「化石じゃないよ、オムライスだもん!」


「・・・・とにかくやめときなさい、きっと千歳君だって食べてからくるわ」


「千里、食べないで来るって言ってたもん」


「・・・・・・・・・・分かった、もう何も言わないわ」




姉はハァ・・と溜息をついて


どうして妹はこんな風になったのだろうかと真剣に悩んだ








ピンポーン・・



「あ、千里来たかな?」








チャイムがなり、ドアを開けると千歳がいた




「よっ」


「千里!あ、入って入って」


「おじゃまします・・・あ、お姉さんもこんにちは」




「千歳君こんにちは、、あたしちょっと出かけるから、キッチンにだけは立たないでね」


「あーもう!分かったって、いってらっしゃい!」




姉は千歳とすれ違いざま、少し哀れむような目で見たが、千歳には何のことか分からなかった








「もう、お姉ちゃんったら大袈裟な」


とお姉さんは似とらんね」


「でしょ?お兄ちゃんとは似てるんだけどさ」




は千歳を部屋へと案内した


の部屋はきちんと片付けられていて、白で統一されていた




「結構片付いとるんやね、もっと散らかっとると思っとった」


「うるさいな、千里が来るって言うから急いで片付けたの!」




千歳はハハッっと笑って


まるで猫をあやすように、くしゃっとの頭を撫でた





千歳はベッドの近くに座った




「そういえば、今日何か作ってくれるんじゃなかったと?」


「あ!そういえばそうだね、今とってくるから待ってて」




は急いでキッチンに向かった








「・・・・・・・・・・、料理・・・・下手なんやね」


「え、えへへ・・お姉ちゃんにもというか、家族というか、みんなに言われた」




千歳はようやく姉のあの哀れむような視線の意味を理解した


目の前の物体は食べ物ではない




「不思議たい・・・」




千歳は九州男児というだけあって、料理はできる


そんな千歳にとっての作った料理は、理解しがたいものだろう




「でも!でも、料理は愛情って言うじゃん?料理のできなさは愛情でカバー・・・・できたらいいな」


「なんねソレ」


「私の千里への愛は無限大なのである」


「えらい嬉か、ばってん俺の方がのことば愛しとるとよ」


「ホントに?」


「ホント」




千歳はの柔らかそうな唇に、触れるだけのキスをした


どんどん真っ赤になっていくを見て千歳は満足げに言った




「ごちそうさん、おかわりしてもよか?」




は小さくゆっくりと首を縦に振った










その日は千歳においしくいただかれ、あのオムライスはというと・・・




「あれ?ねぇちょっとこれ食べれるよ」


「ホントやね、オムライスの味たい」


「見た目はこんなだけど、味だけはちゃんとしてるよ」


の料理の腕はある意味最強やね」


「喜んでいいのか悪いのか・・」




味だけはまともだったようです(笑










END.









あとがき


『silent star』の跡部未菜サマの企画に提出。

参加させていただきありがとうございました。

読んでくださった方もありがとうございました。